


この建築の形は、踊る光と影である。
一日かけてゆっくり踊る
能の舞のようにゆっくり踊る。
それを分厚い彫刻性をもって表現している。
ランダムな曲線の形が、ランダムな構造体となっている。長手41.13m、短手13.13m。高さ7m。自由に出入りできる空隙が12箇所。光の出入りは30箇所。
場所は滋賀県、日本最大の湖、琵琶湖の東岸にできた医療テナントビルである。

町中を水路が流れる。この豊かな水田地帯は、かつて豪快な文化の交叉路であった。西方に京都。南方に熊野、伊勢。北方に聖なる山、伊吹山。古代弥生期より、東方へ行く者はこの地を通った。
能の舞台を見るような、異質さと劇的な効果は、簡素さを通ずる豊かさである。簡素さによって場所を引きしめることでそれをうる。これが、光と影の通り道をつくる、という発想となった。…古代からの恵みを備えるこの地に、ある特別な豊かな形をつくろうとした。

農耕人が畦道を行く。こどもたちが垣根を舞う。木陰で昼寝をする。豪農の季節的な祭祀。獅子舞。餅を手渡しあう人々の挨拶、笑顔と笑顔。さらには、廻国する人々の神楽。そういった人間の舞が、この建築の造形の原点になっている。労役と苦悩を忘れ、日々の呻吟を息抜き、笑い、静める。日常をこえた光芒を「開口」させる。

(縞)の織りなす光芒が、人々の交叉路を普段見るものと性質を変える。形が光を揺り動かす。一日を通じてゆっくりと舞う「縞」のなかを、こどもたちが旋回する。
敷地の隣に幼稚園がある。こどもと母親が通る。ここは小中学校の通学路である。斜向いに公園がある。こどもたちが開口を出たり入ったり遊んでいる。こどもと病院へ行く人々が交通する。病院とは思えぬ爽快さと温もりがここにはある。





