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【紋所の家 -House with Crest-】

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孔を十字に切る。ミシン目のように建築に孔をあける。この建築は「紋所の家」である。
建築へ入る光はつねに動いてとどまることがない。それをはっきりと、象徴的に見ることができる。孔からの円い光は限りなく動いてやまない。ときに消え、また、あらわれる。

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敷地は京都五条、町家形状の一画にある。西は幅4mの道路に接し、人通りも車も多い。東は45mの高層ビルの裏がわが並ぶ。南北の隣家とのあいだには隙間もない。
わたしたちは静謐さをうるために〈平家を空へもちあげる〉。上空3m。下は駐車場として貸す。
空へもちあげた平家は、〈3つの内にはさまれた2つの外〉をつくる。空から自然の風光が2つの虚空へ集まり、3つの内へ抜ける。
通りより(内、外、内、外、内〉と奥へ向かう。このはっきりした配置が相互媒介的にはたらき、全体を一とする。
紋所が通りがわ、まんなかに居間、奥に寝室がある。その3つのあいだに2つの内を挟んで〈空〉をとる。
2つの空のまわりを人が回遊する。回遊するところに円い孔をたくさんあける。計26個、十字のミシン目の孔、光が通ってくる、様々な光、様々なつらなり、劇的な光の動きのなかを人間が美しく動く。

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主人は和服に「紋」を入れる伝統工芸士である。この紋所へ、問屋の商人が何反も和服をかかえて仕事を頼みに来る。孔十字の階段を駆け上がって来る。主人は紋を入れてかれらに渡す。商人は颯爽と京の町へ出ていく。令室はその段取りに光のなかを回遊している。円い光のめぐりのなかに、この家のしあわせが集まってくるのだ。
紋所と住まいは別々でもあり、また、一つでもある。主人と令室はそのような生活をしていらっしゃる。紋をつくるのは細やかな仕事であり、また、商いでもある。静かであり、また、あわただしくもある。
いそいでゆく雲を見る。そのあいまに。

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仕事を終え、まんなかの居間に落ち着く。2つの外に面したガラスが合わせ鏡のように、居間の光はいくつとも知れぬ光となって2つの夕闇の奥へつらなる。闇は濃くなる。上空へもちあげた平家に夜はそのように落ちてくる。

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通りに面した「見せ」の空間に、2枚の壁を、着物の胸元を綴じるように左右を重ね、胸奥を店鋪としている。紋の円い孔が十字にその文様を飾る。紋の種は7000に及び、どんな複雑な紋様も円から造形される。

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  • 建築データ:「紋所の家」
  • 所在地:京都府京都市
  • 敷地面積:236.90平方メートル
  • 建築面積:140.21平方メートル
  • 延床面積:259.78平方メートル
  • 構造:鉄筋コンクリート造
  • 規模:地上2階
  • 用途:住宅兼店舗
  • 構造設計:北條建築構造研究所
  • 施工:寿建設
  • 写真:鳥村鋼一